手帳更新「しない(できない)」あなたならどうする?

障がい者枠採用に必要な「手帳」
返却したとしても、それが解雇理由とはならない

障がい者手帳更新にまつわる課題、問題について。
読者対象:障がい当事者、企業経営者、社労士、支援者など



精神、発達障がい者の就労支援を行っている中で企業側からも障がい当事者からも聞かれることがある。それは、

「手帳を更新しなかった場合にどうなるか?」

ここでの「手帳」は精神障害者保健福祉手帳のことである。
当該手帳は、他の療育手帳(地域によって「愛の手帳」など呼称が異なる)や身体障がい者手帳とは違い、2年に1度の更新が必要となる。
更新が必要な理由としては、症状が治癒したり、ある程度緩和したりする可能性があるので更新のタイミングで医師が症状を確認。判断によっては障がいの等級が下がったり上がったり、緩和により障がい者手帳を受けられる症状ではなくなることもある(症状が緩和することは本人にとっては良い事だが・・)

精神障害者保健福祉手帳(東京都).JPG
東京都の精神障害者保健福祉手帳


障がい者雇用を進めている企業としては課されている法定雇用率※を守るためには障がい者手帳を持っている障がい者を雇用する必要が有る。

※法定雇用率とは?
事業主は、全従業員数の一定割合以上の障がい者を雇用しなければならない。この割合を法定雇用率と言い現在は2.2%従業員が45.5人(要するに46人)以上いるところは障がい者の雇用義務が生じる。
例:全従業員数1,000人(民間企業)1,000人×2.2%=22人 この会社は22人以上の障がい者手帳を持った障がい者の雇用義務があるということ。

例えば、企業が障がい者雇用の一環で1人の精神障がい者手帳を持った方を雇用したとする。
企業は、雇った方が手帳を持っているので、法定雇用率に算入できる。ところが二年後の手帳更新時に既述の通り緩和によって手帳が受けられなくなったり、何かの理由で本人が「更新しない」と判断(決断)した場合に齟齬が生じる。


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企業側の本音は・・


障がい当事者が更新せず手帳を返還した場合、法定雇用率に算入する条件の「手帳を持った」障がい者ではなくなる。
企業側からはこんな声を聞く



人事 けっ!.jpg
「手帳を持っていたから雇ったのに、返却したらどうすればいいの?辞めてもらうわけにはいかないよね?」



もちろん、手帳がなくなったから辞めてくださいとは言えない。
手帳の不所持を理由に解雇した場合は、労働基準法に違反します。

では、手帳返却の場合はどうなるのか?どうすべきなのか?
何か特にルールが決まっているものはなく企業側の裁量に任せられている。グレーな部分である。


以前、参加したセミナーで知り合ったジョブコーチに「手帳更新をしなかった場合」の何か事例はあるか伺ったところ、こんな実例を伺った。仮に田中さんとするが、田中さんはある企業に障がい者枠で就労が決定、その後結婚が決まり、これをきっかけに手帳を返そうということになった(症状も緩和していた)ところが、手帳返却の相談を受けた企業側は「返却せずにこのまま障がい者枠で働いて欲しい」と本人に打診。結果、田中さんは本当は仕事を続けたかったが、無茶を言う会社に嫌気がさし同企業を退職、別の会社でクローズ※で働いている。

※クローズとは? 自分が障がい者であることを言わずに働くこと。逆にオープンは自分が障がい者であることを言って働くこと。

企業側の本音、希望としては「手帳を更新し障がい者枠で仕事を続けてもらいたい」ということ。
しかし、障がい当事者にも人生があり、考え方、生き方がある。それは、至極当然ではあるが尊重しなければならない。症状が緩和したから手帳を返すことになったと言われれば「おめでとう!緩和して良かった!」、何かの理由で手帳を返すことにしたと言われれば、理由を伺った上で「なるほど分かった、応援するよ!」と言える会社が望ましい。

企業側の勝手な理由で「手帳を返すな、障がい者枠で働け!」とはかなり乱暴な言い方である。

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企業側、当事者にお伝えしていること


では、私が企業から「障がい者枠で働いている方が手帳を返すことになった、どうすればいいか?」と言われた時に言うことは

「(法定雇用に参入されませんが)一般雇用で雇ってください」
「一般雇用できるぐらいまで育ててください」ということ。

また、冒頭でも述べましたが手帳更新は2年に1回です、面接時に①手帳の更新時期はいつか?②更新する意思はあるのか?この2点は確認しておきましょう。

当事者の方から「手帳を返却した場合どうなるのか?辞めなければいけないのか?」と言われれば

「一般雇用で雇ってもらえるように、じっくりやっていきましょう」と言っている。

一般雇用されるためには、どんな能力、経験、知識が必要?(分からなければ上司などに相談する)
今それら能力などはある?なければどんな知識などが必要?どうやってそれを得る?
その能力などを得るためまず今日から何ができる?最初のステップはなんだろうか?などなど細分化してお話しを伺っていく。

漠然と「手帳を返したら辞めなきゃいけないのだろうか?」と不安になりがちだが、上記のように細分化して考えを整理していくと「よしやってみよう!」と前向きになる方が多い。



企業側の方へ

後々問題になる部分でもあるので、雇用契約時から手帳返却に際してどうするか事前に決めておくことが後の紛争を避けることに繋がります。社労士さんと相談しつつ「障がい者雇用に特化した就業規則」を作っていただくことを提案します。

障がい当事者の方へ

もし、手帳を返却するに際して企業側から「手帳を返すのであれば、障がい者枠で雇っている意味がないのでクビね!」など言われた場合はお近くの労働基準監督署や社労士にご相談ください。手帳返却を理由に解雇されることは明確に労働基準法に違反しています。

社会保険労務士さんへ

今回のグレーゾーンもそうですが、是非障がい者雇用に特化した就業規則と人事考課制度を作って頂きたい。現在、そのようなものがなく健常者と同じ就業規則、人事考課制度のもとで障がい者は働いています。健常者と同じルール作りをするよりも、障がい者用に就業規則を作成、通院、症状悪化時、配慮点、勤怠、更にはどうなったら評価されて賃金アップなどを考えていただければ企業にとっても障がい者にとっても社労士さんにとってもハッピーなことだと思います。是非、検討ください!!!

議員さんへ

現状、障がい者雇用に必要なものは「障害者手帳」です。これがなければ障害者雇用率に算入できません。採用当時に手帳保持者だった方が、途中で返却した場合に、上記の通り齟齬が生じます。当事者が返却しても安心して働き続けることができるように、何か支援策を検討頂きたい。


最後に

精神障がい者の雇用数は現在5万人を突破、4月から精神障害者雇用義務化が始まったことや法定雇用率が上がったことなどにより今後より一層雇用者数の増加が見込まれる。今回の「手帳返却時」の問題、課題はグレーな部分であり今後返却するとなった場合にどうするのかは考えていかなければならない。解決策として例えば、障がい者枠で雇用後、一般枠での就労にスライドする場合は企業に助成金を出すことや返却後も法定雇用率に参入し続けるなどが解決策としてあげられるかもしれない。



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