「生きることは誰かの光になること。自分自身の命をすり減らすことで、誰かの光になる。そうやってお互いにお互いを照らし合っている」
作者は小川糸さん。2008年「食堂のかたつむり」でデビュー。英語、フランス語、スペイン語など多くの国の言葉に翻訳され様々な国で出版されている。「食堂のかたつむり」では2010年に映画化。「つるかめ助産院」「ツバキ文具店」がNHKでテレビドラマ化されている。
以下ネタバレ注意
【内容】
主人公は33歳の海野雫。彼女は末期がんで余命宣告を受ける。親にも友人にも言わず「最後の場所」として瀬戸内の島にあるホスピスで過ごすことに。そのホスピスの名前が「ライオン」そこでは毎週日曜日に入所者が最後に食べたいおやつを抽選で決定し皆で食べる決まりがある。それぞれの入所者のそれぞれの思いがこもった「最後のおやつ」。主人公の雫はホスピスで出会う個性豊かな人たちを通じて自分の生と死を考えるようになる。
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【ビフォー】
ホスピスでの話しということで、生きるとは何か死ぬとは何かを読者に問うよくある教訓的なものかと思ったが、決してそうではない。主人公が日増しに体が悪くなる時も痛々しい感じではなく客観的に淡々とゆるやかな時間軸の中で進んでいく。
【気づき】
・主人公は自身のがんを非壊することも悲憤することもなくただただ受け止めて泰然に悠揚に過ごそうとする。死を受け止めようとする葛藤。
・ローソクのたとえから「一隅を照らす」について
「人生と言うのは、つくづく一本のろうそくに似ている・・・生きることは誰かの光になること。自分自身の命をすり減らすことで、誰かの光になる。そうやってお互いにお互いを照らし合っている」
・バナナの話しから、当たり前が当たり前でなく奇跡であること。しかし、その奇跡が目の前に当たり前にある状況が奇跡と思えない、麻痺している。「バナナの命も、私の命も、等しく尊い」
・ちょっとした性描写(性表現)が3か所あった。その箇所がなければ小中学生にもお勧めしたかった。ディープなキスシーン、入居者の名前、死ぬときの感覚
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